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2002年3月

海外青年協力隊の高井史代さんキスムを去る
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3回もマラリアにかかりながらもがんばり続けた2年 間の汗と涙の協力隊生活の総決算

かまど作りセミナー報告書公開
2002年3月3日

エンザロかまどプロジェクトに関わって

11−3、 キスム、村落開発普及員 高井 史代

2001年2月JICA専門家の岸田さんの下で、太陽熱実験を行った。私 自身は、キスムと、バリンゴの実験に参加した。この実験を通じて、岸 田さんの有名なプロジェクトであるエンザロかまど(ENZAROとはWest ern Provinceにある村の名前である。)を幾つか実際に見たり、岸田さんの 長年の同僚であり、エンザロかまどの指導者であるケニア人と一緒に 仕事をしたりする中で、かまどの普及をやってみたいと思った。

一番いいなあと思ったのは、自分でも実際にかまどを作り、使い、また ボランティアとして地域にかまどを普及させている女性達が皆生き生き としていたことだ。みな、自分のかまど自慢を始めるのだ。私は、思わ ず微笑んでしまった。エンザロかまどは家の大きさにあわせて、自分の 使い勝手に合わせて好きなように作ることが出来る。だからどれをとっ ても同じものはない。押し付けるのではない、地域の人たちのニーズに 合わせて彼ら主体の活動をする。頭ではわかっていてもとても難しい。 いつも気が付くと、1人で空回り・・・なんてことはよくある。かまど作りを 通じて何か得るものがあるような気がした。

こうして2001年5月岸田さんの同僚を講師として招き、私のエンザロか まど普及プロジェクトが始まった。 

まず、このプロジェクトを始めるにあたり配属先には予算が無かった。ケ ニア人ボランティアの交通費、日当などの費用はJICA事務所からもで ない。そこで、協力隊隊員有志数人で"もっと"小さなハートプロジェク トという基金を立ち上げた。(「協力隊を育てる会」のプロジェクトの名前 をもじりました。すみません。) 

この基金は核となっていた11−3が2002年4月に帰国するのに伴っ て終了となってしまったが、これを通じて隊員個人の日々の活動を他 の隊員やJICA事務所、さらにはもう少し広い範囲の方々に知ってもら う事が出来たと思っている。 また、活動するにあたりソフト面(交通費、 日当など)での援助の必要性を訴えることが出来たと思う。

さて、話しをかまどに戻そう。 任地キスムとキシイ、ニャミラ地区でのか まど製作を通じて、私なりのかまど普及計画を練った。それが、各地域 でかまど作りの指導者を育てていくことだった。まずかまどの宣伝活動 を行う。そして興味を持ってくれた団体、地域を訪れ、かまどを紹介、 製作する。しばらくしたらフォローアップとして再びその地域を訪れ問 題点を指摘し、叱咤激励する。不思議な事に、フォローアップを行うと 皆、張り切ってやりはじめるのだ。 「フォローアップが大切なのよ」とお っしゃっていた岸田さんの言葉は正しかった。

皆、数をこなすにつれだんだんうまくなっていく。私にとっても彼らのか まどを見るのは嬉しいことだった。いろいろな地域を訪れ、地域ごとに 土質、石の有無、生活状況が違う事から同じかまどでも地域によって 色々工夫しなければいけないことがあること、教える側がその各地域の 要求に的確に答えていけるだけの知識と柔軟性を持っていなければ 普及は難しいわかってきた。そこで私の最後のフォローアップとして各 地で中心となって普及に取り組んでいるかまどトレーナー達のスキルと やる気を高めるためにセミナーを開催した。

セミナーは2002年2月21日から1泊2日でキスムで行った。9つの地 域から20名を呼んだ。セミナー後に出席者自らかまどネットワークを立 ち上げるなど、続いていくかどうかは別としても、当初の目標であった 出席者のモティベーションを高めると言う点では成功(?)ではないだ
ろうか。スキルアップという点ではセミナーのさいごにEVALUATION  TESTを行った結果、全員が75%以上の回答率を示しており予想を上 回った。

2001年5月から始めたこのエンザロかまどプロジェクトもセミナーをも って私にとっては1つの区切りとなった。これまでの約1年間に12の地 域を訪れ、そのうち9つの地域である程度の反応が見られた。2月21 日現在セミナーに参加した9つの地域でかまどの総数はあわせて440 基にのぼり、このプロジェクトに参加したクループ数は90にのぼった。 私が未熟で至らない点は数知れずあったものの、自分なりに精一杯や ったと自負している。

最後に、このかまどプロジェクトを始め、ここまで続けてくるにあたって 数々の助言、援助をしてくださったエンザロかまどの発案者であるJIC A専門家の岸田さんに、JICA(JOCV)のプロジェクトとして直接支援し て頂く事はできなかったものの、"もっと"小さなハートプロジェクトを後 ろから支えてくださったケニア事務所の皆様、募金に協力してくださっ た全ての方々に、そして何よりも腹が立ってイライラして怒ってばかりい る私に最後まで辛抱強く付き合ってくれたケニアの同僚、友人達に心 から感謝します。 ありがとうございました。


注)エンザロかまど:

エンザロかまどは粘土質の土と、平らな石で作る。

かまどの特徴としては、焚き口が1つで料理が同時に3か所できること 。使用する燃料を減らせること。まき拾いや料理は主に女性の仕事な ので、女性の労働を軽減できること。小さな子供がなべをひっくり返す など、事故による火傷をへらすことができること、などがある。

弱点としては、土で出来ているため定期的に補修・補強の必要がある こと。人によっては調理時間が短くなったため、家族団欒の時間が減 ったという意見がある。しかしながらこれに関しては、調理時間が短くな って出来た時間を家族団欒の時間に当てるなど出来るのではないだ ろうか。

あとは、紹介して作りっぱなしだといつしか誰も使わなくなってしまうの で、着実に定着するまで定期的にフォローアップを行う必要がある。ま た、普及していくうちに焚き口が小さく、狭くなっていく傾向があるので 、熱効率の良いかまどの構造を知り製作することが大切である。